ギャロウズポール 04/2/15


 物凄いような夕焼けが曠野を包み、ユラユラと絞首台に吊らされた死体が風に吹かれ揺れていた。死体の足元には幾枚かの銀貨が落ちている。絞首台の傍らに立つ首吊り執行人は薄ら笑いを浮かべたまま、じっと揺れる死体を見ていた。ジーザス! 勿論これは夢の話で本当のことじゃない。絞首台でユラユラと揺れているのが、まさか、まさか、いや大丈夫これは夢の話で勿論本当のことじゃない。こんなことが実際にある筈がない。首吊り執行人は薄ら笑いを止めない。どこか遠くで誰かがバンジョーを弾いているようで、陽気な「フォギー・マウンテン・ブレイク・ダウン」が風に乗って僅かに聞こえてくる。その風が死体を、僕の妹を揺らしている。首吊り執行人は薄ら笑いを止めない。
「お前の妹はお前を助けるために吊られるハメになったのさ」
 違う違う。これは勿論夢の話で本当のことじゃない。こんな酷い話があって良い訳がない。ユラユラと揺れる妹の足元には幾枚かの銀貨が落ちている。その銀貨が何故だか血に塗られているように見えるのは一体全体どういう訳だろう?
「お前は解っているはずさ。女がギャロウズポールに吊られされるって意味を。そうさ、女はギャロウズポールに吊られたのさ」
 微かに聞こえてくる「フォギー・マウンテン・ブレイク・ダウン」にあわせて首吊り執行人は相変らず薄ら笑いを浮かべたまま歌うように言う。だけど僕には彼が一体全体何を言っているのか解からない。決して解からない。そうさ、勿論これは夢の話で本当のことじゃない。
「いいや、お前は解っているはずさ。これは夢なんかじゃなくて全部本当のことだってことを。唯一つ、首吊り執行人なんていやしないってことを除いて」
 一体何を言っているんだこの男は? 自分自身のことをいやしないなんて言うなんて。頭がおかしいんじゃないか? 僕は思わず薄ら笑いを浮かべてしまう。
「ほら!」
 僕のその笑みを見た首吊り執行人は飛びっきりの笑顔でそう言うと忽然と姿を消した。陽気なバンジョーの音を風が運ぶ。物凄いような夕焼けが曠野包んでいる。そして、首吊り執行人はもういないのだけど、妹は相変らず絞首台に吊らされたままユラユラと風に吹かれている。僕は頭がグルグルとしていた。ロックアンドロール! エレキギターを掻き鳴らしたい気分だ。

「She is swinging on the gallows pole yeah!」

 僕は沈み行く夕陽に叫んだ。目は決して覚めなかった。死体の足元にある銀貨は血に塗られていた。死体の足元にある銀貨は、死体の足元の、死体の、したいの、し た い の。
 
 目は決して覚めない。
 ポツンと絞首台が立つ曠野を物凄いような夕焼けが包んでいた。


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